酒井さん?

酒井さん?

 鎌倉市に住む友人酒井夫妻が近く家を新築しようと土地を探し、買った。夫人が、同じ酒井さんという方から買ったの。とおっしゃる。酒井忠康さん?とわたし。そう、と酒井夫人。へえ、おもしろい。ご存知?。ご存知と言うほどではないけれど、平成4年の夏に、フランスのマルモッタン美術館長さんだったころのアルノー・ドートリブ氏を神奈川県立近代美術館にご案内して、酒井館長さんにお会いした。16年も前のことで、チケットを買わずに入館したことや、館長室に通して頂いたことを覚えているが、後は、何が
企画されていたか記憶にない。その2年前にはやはりフランスのポール・アンビュー(現テーラー財団会長)氏を鎌倉にご案内した。その時の館長さんはやはり酒井さんだったかと思うのだが忘れている。ポール・アンビュー氏は棟方志功記念館の企画の方が興味深かった模様で、熱心に見入っておられた。それから後、ジャン・マリ・ザッキさん(もちろんフランス人・レジョンドヌール勲章受章者)をご案内したときにもやはり酒井さんが館長さんだったと思うのだが、このときには生憎と館長さんはお留守だった記憶がある。ザッキさんを葉山の「山口逢春記念館」に案内した時には時間切れで残念ながら見ることが出来なかった。“折角世界のザッキが来たのに”、と私が言って、帰ったのだった。いずれも通訳の方が勿論ご一緒。ドートリブ氏の時やザッキ氏の時には欧州美術クラブの代表、馬郡俊文氏が付き添って来られた。建長寺や大仏を暑い中ご案内した。昼は竹薮が多い蕎麦どころで戴き、500羅漢さんを楽しんで頂いた。
ポール・アンビュー氏のいらした季節は丁度葉山の神明社の祭礼の日で、お神輿を担いで日本の祭りを体験して頂いた。この時の通訳は友人の画家・小園ケイ子さん。丁度夫金城の誕生日で、ポール氏は当時はとても高かったドン・ペリを注文してくださって、ホテル音羽の森でのディナーが盛り上がった。“貴女はいつも今日が結婚記念日”とか言って、とポール氏が冗談を言ったから。その前年にポールさんのところ、クレルモンで、丁度6月6日の結婚記念日に絵を一枚仕上げ、夫にプレゼントしようとした“6月の庭園”があり、その事をしっかり覚えておられた。今年は年賀状もいただいた。それは私の宝の一つになった。
 酒井さんの土地はやがて同じ酒井さん、お医師夫妻によってデザインされた家が建つ。楽しみにしている。先日遊びに来た酒井氏の3歳の息子は言った。大きい絵が欲しいね。と。我が家の壁中に飾ってある絵をあれこれ見て、うちのは小さいねぇ。と母親に言っていたことを私は聞き逃さなかったの。フフこれも楽しみ。宜しくお願いします。